対談 村上和雄 柳瀬宏秀
月刊『致知』一月号 連載/生命のメッセージ

人工的時間を解き放ち
いま、宇宙リズムで生きる

環境意識コミュニケーション研究所
代表 柳瀬 宏秀

筑波大学名誉教授
村上 和雄

【リード】
新年を迎え、何の疑いもなく使い始める新しい手帳やカレンダー。そこに現代社会の行き詰まりの原因があると柳瀬宏秀氏は語る。マヤ文明の叡智を広めることを中心に、現代人の意識変革に努める氏を迎え、村上和雄氏とともに宇宙的視野で「時間」について、「祈り」について話し合っていただいた。


柳瀬宏秀――やなせ・ひろひで 
昭和31年大阪府生まれ。青山学院大学大学院フランス文学専攻修士課程修了。その後、20年電通にてコピーライター、CMプランナー、映像プロデューサーとして活躍。平成14年退職。マヤの時間の叡智を伝え、環境意識を取り戻すための祭りのプロデュースやパラダイムシフトを提唱している。著書は、マヤの叡智から生まれた『コズミック・ダイアリー』(環境意識コミュニケーション研究所) 最新刊12月10日発売『初詣の 願いを 祈りに』(同社)

村上和雄――むらかみ・かずお
昭和11年奈良県生まれ。38年京都大学大学院博士課程修了。53年筑波大学教授就任。遺伝子工学で世界をリードする第一人者。平成11年より現職。著書は『スイッチ・オンの生き方』(致知出版社)他多数。最新刊に『運命をひらく小さな習慣』(共著・同社)がある。

パラダイムシフトは
カレンダーから

村上 柳瀬さんは、いまはマヤの『コズミック・ダイアリー』を伝えて活躍されていますが、最初に会った時は電通におられましたから、電通にこんな変わった人がいるな、と非常に印象的でした。

柳瀬 変わっていました(笑)?

村上 私たちが考えている電通というのは、いわゆる資本主義の先兵で、とにかく経営とかコマーシャルということが中心のはずなのに、柳瀬さんは変わっている。精神性というか、そういう、お金じゃない世界に興味があるような気がして。その後、「コズミック・ダイアリー」、さらに、月というものに注目され「京都、満月祭り」をプロデュースされたというのもユニークでした。

柳瀬 村上先生にお会いしたのは、十三年前、CMプランナーからできたばかりの映画のセクションに変わってしばらくした頃でした。
 運がよくて、すぐに『バッドマン』の大型タイアップを決めたり、ワーナーから、スピルバーグの『タイニートゥーンアドベンチャー』の日本でのプロデュースを頼まれたり、たまたまの流れで、考えられないくらい大きな仕事をさせていただいてそれなりの実績を上げていたので、自由に自分のやりたいことが出来る環境にありました。

村上 才能があった。

柳瀬 いや、ツキですね。それで、その頃から日本の食と農と医療のパラダイムシフトの必要性をものすごく感じていたので、そういう分野の方々に取材していったわけです。マクロビオテックの久司道夫さんとか、EM菌の比嘉照夫さんとか。今は、水の結晶で有名な、波動の江本勝さんとか。その中で村上先生のことを知ったんですね。
 例えばイエスに触れただけで病気が治るというのは、遺伝子のオンとオフで説明できて、いま日本でそういう研究を進めていると。その発想というか、言葉と、実際に遺伝子について研究の最先端の業績をあげておられるということを知った時に、お会いして今後の日本のためにそれをコミュニケーションできるのであればしたい。そういう感覚でお会いし、それで電通の中で長時間インタビューさせていただきました。

村上 柳瀬さんはCMをつくって人の購買意欲を煽って、物が売れて、利益を挙げればそれでいいというだけではなかったわけだ。どういう思考から、いまの活動に繋がっていったのですか。

柳瀬 もともと、インド哲学やヨーガにも興味があり、大学院の時代は一日四時間ぐらいヨーガや瞑想をして、あとは専門の研究というお坊さんみたいな生活をしていた頃もあるんですよ。CMの仕事でも、最先端の思想や考えこそ、クリエィティブだと思っていました。
それで、日本では、マヤの叡智についてまだ、ほとんど知られていない状態の時に、マヤ暦のことを世界に知らしめた人と会う機会ができたんです。代理人の方から「今度ホゼ・アグエイアス博士が来日して記者会見するからアドバイスしてほしい」と。
その席で、彼は「パラダイムシフトの根底はカレンダーだ」と言ったんですね。当時、パラダイムシフトに関して一番詳しかったと思うし、本気でそれを起こそうと思って動いていましたが、誰も「カレンダー」に着目している人などいなかった。だから、最初は「この人は、何を言っているんだろう?」と思いました。

二〇一二年で
今回の歴史の周期は終わる

村上 パラダイムシフトの根底はカレンダーとは、どういうことを示しているんですか。

柳瀬 1582年にカレンダーをグレゴリオ暦に変えてから植民地政策が始まるわけです。それまで微増だった人口は、倍々になって今では七十億人に達しようとしています。
何かあるなと思って日本のことを見たら、明治五年にカレンダーを変えて日本は変わっていくわけですね。
富国強兵になったり、近代化が進んだり、日本が変わっていった。近代化、都市文明のせいで、日本人は変わった。月もあまり見なくなったと思っています。でも、そうじゃなくて、多分、カレンダーを変えたから、生活のリズムが自然のリズムじゃなくなった。あれだけ月を楽しんで自然のリズムで生きていた人間が、人工的なリズム、三十一日、二十八日、三十日・・・というガタガタなリズム、自然とは何の関係もないリズムで生き始めることによって価値観まで人工の方にシフトした。
近代化はいいんだけど、日本人が自然を感じなくなる必要はないですよね。
そう考えると、食も医療も人工的な価値観、つまり、お金や効率にシフトし過ぎたから全部おかしくなったというふうに見えてきた。今は、明確にカレンダーがプログラミングであることがわかります。

村上 どうしてホゼ氏はそういう考えに至ったんでしょうか。

柳瀬 マヤの時間に触れたからですね。彼は十四歳の時にマヤの遺跡で有名なメキシコのテオティワカンに行ってるんですね。その時からマヤの叡智を世に伝えたいという思いが芽生えたようです。

村上 現代でもマヤ人に会えるんですか?古代に栄えた文明ですよね。今も何かが残っているんですか。

柳瀬 ピラミッドが残っているし、厳密に言うと、マヤ人というのは今も100万人いるんですよ。いるけれども、ここがすごく難しいところで、番組なんかで古代マヤの特集を年末などによくやっていますけど、全部間違っています。「古代マヤの叡智を探る」と言いながら、今のマヤ人の風俗を撮ってきて、今使っているマヤのカレンダーを表面的に説明して、何となく遺跡から古代マヤを感じさせるだけで、古代マヤの叡智を少し探っていない。

村上 マヤの叡智とは何なのでしょうか?

柳瀬 古代マヤと現代人とが、全然違うのは「時間の概念」が違うんですね。マヤにとっては、時間とは宇宙の周期なのです。古代マヤの高度な文明はどういうことかというと、例えば天文学について、ガリレオの業績は地動説ですね。でも、マヤは地球の公転周期を現代科学とほぼ同じ小数点4桁まで測っていたんですね。さらに、金星の公転周期も知っていました。
ガリレオの地動説より千年も前に、地動説を凌駕していた文明ということですね。
そして、時間が周期だということを熟知し、さらに、神聖暦(ツオルキン)という4次元以上の時間の尺度も持っていた。
ホゼとか柳瀬がマヤと言っているのは、(マヤ的にいうと第10バクトゥーンというのですが)、435年から830年までの時代のマヤで、ピラミッドを残して消えたといわれている古典マヤのことです。そのマヤの人たちがものすごい高度な文明をつくって消えちゃったんです。

村上 どうして消えたんですか。

柳瀬 それが謎で、歴史学者もわかっていない。周期が閉じるということを考えると、何らかの目的があってそこで生きて、あるべきものを残して、その役目がなくなったから、周期が来たから消えた、という考え方をホゼ・アグエイアスはしています。
 マヤ人は点在していましたから消えなかったマヤ、残されたマヤ人もいるのですが、八三〇年以降は学術的にも芸術的にもレベルが急落します。そして、十六世紀にスペイン人が植民地化して、マヤの叡智を伝えるほとんどのものを燃やしてしまい、マヤの真の叡智は歴史から姿を消してしまいました。

村上 それが、なぜいまこうしてマヤ文明にスポットが当たっているのですか。

柳瀬 一九五二年にメキシコのパレンケで、パカル・ヴォタンの墓が発見され、そこにあった文字の解読が始まったのです。でも、考古学者は解読できなかった。それは、「時間」が全く違ったからです。
一九八七年にホゼが「マヤン・ファクター」という本を出版し、世界を震撼させます。その内容は、直線の時間ではなく、周期としての時間というマヤの叡智を伝え、二〇一二年について伝えました。それが、今の二〇一二年、マヤの預言、マヤ暦ブームの大元です。
マヤでいう今回の歴史の周期の始まりはいまの年表でいうとBC三一一三年。それはメソポタミア文明が始まった時期にぴったり一致しています。で、周期の終わりはいつかというと……、二〇一二年なのです。

村上 あと二年だ。

柳瀬 二〇一二年というのは一つの周期の終わりだと。一つの周期が終わるということは、そこで次のサイクルへ転換しなければならないことを意味しているのです。

時間とは
オーガニック・オーダー

柳瀬 普通の人は「時間は時計」だと思っています。でも、時計が時間だとしたら時計のなかった300年前には日本には時間はなかったんですか、というと、そんなことはないですね。
 時間は時計ではない。時間とは何かというと、「周期」なんですね。公転が一年であり、自転が一日である。その間にどういうものが生まれるかというと、オーガニック・オーダーという言い方をしているんですが、有機的な秩序が、春夏秋冬、ダイナミックに変化していくわけです。
もみじが紅葉するのは、間違いなく太陽の周りを地球が回っているからで、それで日の出が遅くなって気温が下がっていって、冬になる前に木が紅葉して落葉して身を守るために・・・という因果が見えるわけじゃないですか。

村上 柳瀬さんの本『マヤの叡智と日本人の魂の融合』に書いてあるけど、今、農業の問題で、人は「私がつくった野菜です」と言う。人間が野菜をつくれるのか、「野菜をつくっているのは、太陽であり、水であり、空気であり、地球であり」。私流に言うとサムシンググレートの力が野菜をつくって、人間はジャストヘルプしているだけなんですね。
ところが、太陽とか月とか地球というもののことは忘れてしまって、自然を感じない。しかし、太陽がなければ野菜はできないというのは当たり前です。子供をつくるということも同じ発想で、人間は細胞一つつくれない、自分の力では子供はできない。野菜をつくれるわけがないんですよね。ところが、それが野菜を「つくる」、「私の野菜ですよ」とか、それで通っているわけです。
それはやっぱり考え方が少しおかしい、というか人間が傲慢になっている、そういうことじゃないかと思います。だから、自然を感じること、取り戻すことが環境問題解決のベースですよね。

柳瀬 環境意識コミュニケーション研究所を立ち上げたのは、周りのことを感じる、月とか太陽とか自然を感じる環境意識を高めること以外はやらないという宣言です。

村上 環境意識という名前にされたのは、太陽にも、月にも、宇宙にも意識のようなものがあるという、そういう意味ですか。

柳瀬 そこまでは。(笑い) 環境は周りのものです。それを意識する、感じる。

村上 うん、環境を感じる。

柳瀬 環境意識というのは、まず自然を感じる。我々が生きている、それを支えているものを感じること・・・太陽であり、月であり、大地であり、そして空気であり、「環境意識はまわりを感じること」。その先に、おっしゃるように宇宙のリズムを感じ、宇宙の意志を「観じる」ことになります。

村上 確かに昔の人はカレンダーがなくても季節の移り変わりを感じていたし、時計がなくても一日のあらかたの時間を感じていたわけですからね。

柳瀬 自然のリズムに添って生きるために二十八日×十三か月+一日の日記『コズミック・ダイアリー』をつくっているのですが、そういうリズムで生き始めると、例えば生理不順だった人が治ったりするんです。まあ、それは当たり前といえばそれまでのことで、そもそも女性の生理周期は二十八日なのに、それを三十日とか、三十一日にあわせて生きるほうがおかしい。お肌のターンオーバー(細胞の再生)もやはり二十八日です。

村上 毎月決まった周期で女性に生理がきたり、人間の肌の細胞が生まれ変わるということは、遺伝子にも「二十八日」というサイクルの情報が入っているんでしょう。

柳瀬 それが宇宙のリズムだと思うんです。体は一か月二十八日の周期で生きることを求めているのに、頭は三十日、二十八日、三十一日・・・とガタガタのリズムで生きている。それじゃ多くの現代人の自律神経がおかしくなるのも無理のないことですよ。
 二十八日周期の「コズミック・ダイアリー」をつけることによって、頭も、宇宙の二十八日周期を感じ始めます。宇宙も、頭の中も、身体の中の細胞も、同じリズムで生きていれば、自律神経が正常になっていくのが自然です。コズミック・ダイアリーを使い始めた女性から、信じられないくらい多くの「生理不順が治った」という報告をいただきます。でも、生理不順を治すためにつくったわけではありませんよ。(笑)

一か月二十八日が
宇宙のリズム

柳瀬 満月の周期は二十九・五三日、月の公転周期は二十七・三二日、太陽の自転周期は約二十八日です。地上で生きている人間にとって、太陽と地球と月が生み出す、一ヶ月の宇宙の周期は、約二十八日であると推論できます。
「コズミック・ダイアリー」の一年というのは二十八日×十三か月に、一日の調整で、太陽の周期と月の周期を調和させることができる。それが人類にとって、もっとも自然のリズムに添った周期と言えます。
 ところが、グレゴリオ暦では三十一日、二十八日、三十一日・・・・とガタガタです。そんなリズムは宇宙にも、体にもない。そういうリズムで生き始めたことによって、自然を感じることがなくなるわけです。自然を感じるから、自然のことを、地球のことを「思いやる」ことができるわけです。人工的なカレンダーのせいで自然を感じなくなり、むしろ自然を征服して近代化を進めていく文化を生み出した要因になったのではないかと思います。

二〇一二年に向けて
どう生きるのか?

柳瀬 やはり自然のリズムに添った生き方を取り戻すことが、いま人類が直面している問題を解決することに繋がっていると思います。 
自然時間を取り戻すキーワードは「時間はオーガニック・オーダー」と言っているのですが、時間とは、太陽の自転や月の公転といった、あらゆる事象の中で有機的秩序のもとでつくりあげられるものなんですね。
それを実感して、機械時計の中に閉じ込められた二次元の人工的な時間から解き放つことができるかどうかが、これからの時代を生きる重要な課題になっていくと思います。
 マヤの預言は、二〇一二年までに「自然時間を取り戻せ」というメッセージです。さらに、高次元の時間を通して、人が高次元にアクセスして進化するためにマヤの叡智が、人類の意識のなかに必然的に浮上してきたと思っています。

村上 私自身はマヤ暦のことなど詳しくは存じ上げませんでしたが、二〇一二年が一つの転換期だということは聞いていました。一般の方もたぶん聞いていると思います。

柳瀬 ええ、人間がその日に向けて進化を促されているということを感じて、それまでに進化に向けて動き始めることを、銀河マヤ、あるいはサムシンググレートが促しているんじゃないかというふうに思います。
「二〇一二年はどうなるんですか」という取材をよく受けます。人と比較して「柳瀬がこう言っている」と記事にしたいようですけれども、虫の居所が悪いと怒るんです(笑)。だって、いま一年間に五万種の生命種が絶滅している。それは誰のせいかといえば人類のせいで、もっといえばあなたのせいでもあるのでしょう、と。十年前にあなたが生き方を変えていたら世の中は変わっていたはずなのに、それをないがしろにして、「二〇一二年、どうなるのですか」という話じゃないでしょうと。あなたにかかっているのです、と。
 二〇一二年までに自分は何をするのか、どうするのか、という問いかけが預言なのです。

村上 なんとなく、多くの人は、生き方を変えなければならないことは分かっているようですね。

柳瀬 そこで、初詣の「願いを、祈りに」と呼びかけ始めました。
お正月、何万人という人が神社に行きます。もしも新しい一年が始まる時、聖なる神社仏閣に初詣にいく九千万人の人が、自分のための「願い」を地球や宇宙への「祈り」に変えたら、それってすごいエネルギーを生み出すと思いません? それこそ大きなパラダイムシフトになると思っています。

村上 祈りには大きな力があるんですよ。以前、アメリカで東海岸にいる人が西海岸にいる患者へ祈りを捧げるという実験をしました。もちろん、祈られている側は自分が東海岸から祈られているなんていうことを知らないわけですが、祈られない患者よりも回復が早かったといいます。そういうことで、「祈りと医療」というのは、少なくとも最先端科学の中に入りつつあるのです。
 また、私は「人間とは祈る動物」だと思っているんですね。祈りとは宗教的だと思う人もいるかもしれませんが、宗教が発生する以前から人間は祈っているし、形は違ってもどの民族にも祈りの習慣はある。そう考えると、人間には「祈り」の遺伝子があるんじゃないかと思っています。

柳瀬 そこが重要なんですね。つまり、「初詣の願いを祈りに」というのは、神社とお寺という精神と魂にかかわる場所で、一年の最初に、数千万人の日本人と一緒に、「願い」を「祈り」に変え、一緒に「祈る」。

村上 日本だけですね。しかも、宗教を問わず行きますからね。宗派に関係なく、ほとんどの日本人が行くという現象は、世界的に見て非常にユニークですね。何かあると思います。

柳瀬 「無」になり、本質に立ち戻るということは、魂の世界、神の領域も含めた、建て直しになると思います。

村上 しかし、柳瀬さんの話を久しぶりに聞きましたけど、おもしろいですね。

柳瀬 「遺伝子と祈り」の研究、すごく期待しています。
人間の「願い」に神も「乗れる」祈りということと、神の「祈り」に人間の意識が同調するということは、実は同じことだと思います。神の「祈り」に共振して、三次元の世界に、地球に、日本に、それを顕わしていくための「祈り」を生み出していきたい思います。
 初詣の「願いを、祈りに」を呼びかける講演会を十二月二十八日にも行なう予定です。多くの人に「願いを、祈りに」と呼びかけます。ありがとうございました。