岡本太郎 『沖縄文化論-忘れられた日本』
コズミック・ダイアリー2001より

「太陽の塔」を制作した岡本太郎(1911~1996年)
沖縄を旅した時、岡本太郎が受けとめた、時間の流れ、生命のリズムとは?

 ここにはまるで別な天体であるかのような透明な空間の広がりと、
 キラキラした時間の流れがある。
 私はすでに直観しているのだが、それはこの旅行の結論として発見した、
 というよりも、のっぴきならない実体として、からだの幅全体で受けとめたもの。

 それはまた自分自身を確かめることでもあった。
 私の予想しなかった、人間の生き方の肌理(きめ)。
 ──現代生活のカレンダーによって画一化され、コマ切れにされた時間とその連続。
 自然に対する畏怖と歓喜をうしなって無感動に測られる空間。
 そのような生の条件とはまさに異質だ。

 そして、それがかえってわれわれ日本人の根源的な生き方にふれてくる。

 現代日本は己れの実体を見失っている。
 こういう根源的な時間と空間をどのように現代と対決せしめるか、ということが
 実は日本文化の最も本質的であり、緊急な課題なのではないだろうか。

 この目まぐるしさはどうしたものだろう。
 文明開化以来、西欧から入ってきて頭からすっぽりはめ込まれた近代、
 その時計の針に一生けんめい追いつこうとした後進国意識、
 その焦りが身についてしまったのではないか、
 どうも本当の生き方ではない。
 しかし勿論日本にかぎらない。
 世界じゅうのオーガニゼーション・マンが、
 自覚するしないにかかわらず落ちこんでいる絶望的なシチュエーションである。

 生命のリズムと時計の針との違和感。
 というよりも生命自体が画一化しているということだ。
 ただ空しく一方的時間にのまれてしまっては、生きてる甲斐がない。

            『沖縄文化論-忘れられた日本』岡本太郎著 中央公論社より

この岡本太郎の感じたキラキラした時間の流れを、日本中の子供たちに感じて欲しいと思う。
そして、そのためにも大人たちには、
「根源的な時間と空間をどのように現代と対決せしめるか」を考え、
日本文化の緊急の課題だという岡本太郎の提言を受けとめてほしい。
そして、その提言をそのまま、「コズミック・ダイアリー」からの提言として、繰り返したい。